紺色の中、球体に白い光、葉と羽根と

迷子


気が付くと
今いるところが解からなくなっていた
あると思って進んできた路が
見えない
前にも後ろにも
見えなくなった
見えなくなったの
見なくなったの
見えなくしたの
どうして
見なくなったんだろう

それは
今より先が見えないから
それは
先が見えるのが怖いから
見たくないから
怖くて

だって
気が付いたらもうこんな時間
気が付いたらもう隣の席には人が
やっとなじんだ人が
消えかけている
だから
次に座る人が怖いから
時間が怖いの
路を
進むのが怖いの

それでも停まることの無い時間
時間が進む限り出来てしまう路
だからいつかは路ができる
できてしまう
そうして進まなくてはいけなくなる
その路は
たくさんの分かれ路
長い路を選ぶのか短い路にするのか
選ぶのは誰
わたしが選ぶことができるの
選ばせてください
選んでいいですか
どうか
選択肢が決まる前に
路なき路で
たたずむ

どうか
いましばらく
立ち止まらせてください
どうか
長い路を選ばせないでください
どうかこのまま
今を
ください

薄暗がりで
たたずむ
路を消して
見えなくして
目をつぶって
路が決まってしまうまでのわずかな時間
迷いながら立ち止まる
どこに行くのだろうかと
どこに行っていいのかと
何処でも行っていいのかと
先の時間に居場所はあるのだろうかと
問いかけながら
迷いながら
進むのか
進まされるのか
停まるのか
迷いながら
しばらくの時間
どうかこのまま
迷子
先が見えない
見るのが怖い
怖いから
迷って目をつぶる
見えなくなって
見えなくして
時間よどうか

目を開けて
路を見てしまうのが
怖くて
迷子
いつまでも
どうか



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