闇夜の中飛んでいく鳥、そして球体

誰か〜願い


いいよ
いつでも
そうこれは
誰もが口にする言葉
気軽に
挨拶のように
お願いどうか
これ以上言わないで
いつだってそう
本当につかみたいときには
誰の手もどこにもない
イツデモイイヨなんて社交辞令
誰の手も自分にゆとりのあるときにだけ
他の誰かに向けられるから
だから
必要なときに誰かの手が
目の前にあるなんてうそ

お願いだから
こんな言葉を使わないで
解っていても
期待して
当てにして待っていてしまう
探してしまう
その明かりがいつも在ると
錯覚してしまう
そしてそうなると思っていると
急に消えるもの
そんな手なら
そんな光なら
最初からないほうがいい
必要なときにいなくなるくらいなら
期待しなければ絶望は無いから

誰かいますか
お願い誰か
手が必要で
探し回る
誰か誰かと
呼びかけながら
むなしくこだまする声
いつもこの手から
さらさらと零れ落ちていく大事なもの
壊れてしまう
一人では止められない
誰かお願い
でも
そういうときには
気が付くと何もない
光は遠く
ひとりくらい中
たたずむばかり
いつでもいいといった手は
何時でもいいはずはなく
その場だけで消えるもの
お願いだから
必要なときに消える手なら
差し伸べないで
最初から一人
あるのは自分の手
解っている
解っているのにでも
探してしまう
壊れてしまいそうで
どれでもいい
いつも在ってほしい
在りえないと知りながらどこかで望んでしまっている

壊れるならいっそ
跡形もなく壊れてしまいたい
だから
そういうときには手はいらない
なのに壊れたいときは
それをとめようとする
それも
中途半端に
中途半端だから
余計に苦しくなる
それを
誰もわかってくれない
そして繰り返されるイツデモイイヨ

まだ止めたかった
壊れるのを
だから探した
誰かを
遠く近く
呼びかけて
いくつかの明かり
それは誰かなのか
でも
遠すぎて
届かない
また叫ぶ
誰かと
むなしく消える声
遠くなる光
飛んでいった鳥
昔私の手の中で
いつもいた鳥
突然飛んでいった
はるか彼方へ
もう戻らなかった

誰かいますか
まだ誰か
必要なときに
本当に
手を伸べてくれる誰か

イツデモイイヨは言わないで
駄目な時を聞いたほうがいい
差し伸べる
光がともる
消えては灯る
そして
二度と戻らぬ鳥
いっそ消えたら
壊れてしまいたい
誰か
いるのかいないのか
誰か

誰かいますか
そこに
必要なときに手を伸べてくれる
誰かが

鳥が飛んでゆく
誰かを求めることが
どれほど犠牲を求めることかを
知らしめるように
そして
また
光がちらついては
消える

壊れたい
でも
どこかで
願う矛盾
誰か
誰かいるの
いるはずがない
いつも誰かが
いるはずはない
だから
壊れさせて
そういうときだけ止めないで

飛んでいった鳥
そして
消えては灯る
誰か



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