鎮魂歌〜レクイエム

鎮魂歌〜レクイエム


100のきらきらタチが
33ずつ
それぞれに選んでいった後先
それらはイヴの守り育てる世界の樹
その枝葉と根を伸ばしていくもの
そうして伸ばしていった樹
実りをつけて
咲き誇る枝葉
きらきらと茂る枝葉の基
ずっと見守った
最初の100の
その守護のひとつ

茂った枝葉のさやさやとした
葉ずれの下で
イヴは役目を終えるように
眠りにつく

最初の選択から何億年
最初に生まれてから何十億年
時を越えてきた
最初の華
イヴ
華は実をつけ
樹を育てた

樹は世界になり
世界は枝葉を広げ続ける
なんて大きな大樹になり
さやさやとした枝葉の中
またつぎの
きらきらが 実り零れる

根元でイヴは横たえる
「もういいですか」
もう
「眠って」も
いいですか


最初のひとつ
イヴのきらきら
樹を見つめてきた何十億
その長いときの中で
樹と世界を見護ってきたきらきら
樹を見届け
もういいですか
樹は
もう枝葉をつけて
これ以上なく育った
それが正しい枝葉かは
誰にもわからない
それからは
その枝葉のつけるものの仕事
イヴの役目は
それまでの
樹の護り

もういいですか
長い時間だった
長い時だった
長い選択だった
選んだものと去っていったもの
朽ちていった枝葉たち
他をさえぎってまで伸びる枝葉たち
たくさんのものを観て
たくさんのものを
時を樹に注いだ

もういいですか
横たわるイヴ
もういいですか
そう問いかけながら
そう望みながら
そうである時機を その機を見ながら

朽ちて濁って行くきらきら
最初の100だった
最期のひとつだった
守護のイヴのきらきら
それを
横たえるイヴとともに樹の根元
転がり
イヴとともに横たえて
最後のときを迎える
レクイエムが聞こえる
世界中から
枝葉が
さやさや と
きらきらが ゆれながら

そうしてそして
ちいさな ひかりがひとつ
イヴの最期の願い
願いはまだ眠り
目覚めを待つ

樹の根元
ひっそりと
次の最期のひとつが
まだ見ぬ世界を
待って
夢の中

レクイエムが聞こえる
樹が唄う葉ずれの音と
最後の残った
次の世界から
横たえたイヴ
転がったひとつのきらきら
イヴとともに来たきらきら
イヴとともに割れるきらきら
歌の中
次を望んで
次の目覚めを望んで

あたらしい
世界の望んで

まだ観ることも
見ることも無いだろう世界を
樹の根元に託して

レクイエムが聞こえる
樹が
唄う葉ずれの中に
目を閉じた
永遠の中へ


しずかな
鎮魂歌が聞こえる
レクイエム
その樹の下で


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