白い丘に3本の樹が立つ

影が語るもの〜

「家族の樹」に寄せて


樹が並んでいた
互いに枝を茂らせて重なり合って
並んだ樹は
一つの影を作る
樹の数は何本
1,2,3,4、・・・
影はひとつ
それはひとつの形を成し
飛び立とうとしているひとつの形
数本のものがひとつになった
ひとつ

大勢が集まってひとつ
数はたくさんでも
出来るものは一つ
ひとつの影

「これからはカゾクひとつにはいろう」
そういった
なのに
入ることが出来ない
あまりに既にがっちりと
ひとつのカゾクに出来上がっていて
途中からは入ることが出来ない
父というもの母というものその息子夫婦というもの
ひとつにかたまって
つうじあっていて
“伯母”という立場におかれた私は既に
其処の輪には入り口はできていなかった
かぞく
其処を一度出てしまったら
どんな形で出ることであっても
空白の時は埋まらない
埋まらないから輪に入れない
「これからはひとつのかぞくでみんなで・・・」
「両親が生きているうちは親子に変わりは無いんだから遠慮する事は無い」
そういう言葉がかけられる
でも
あまりにも
“輪”は既に
しっかりと出来てしまっていて
私の入り込む余地が無い
それに気がついてください
気がついてオネガイ

気がついてもらえないまま
時は過ぎるだけ
離れていく
家族の樹は並んでいる
ひとつの形を成した影を落として
其処に入れば
その影を壊す
入ることの出来ない並んだ樹
離れるしかなかった
離れていった
離れ切れないまま
遠く近く
一つには入れないままに
はなれて
見守り続けること
それだけだった
カゾク
ひとつの大勢
かぞく
しっかり固まって
他を入れないもの
かなしいかな
はいることが
今の私には既に
できない

性別のせい
一度出た性
なにがいけなかったのだろう



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