森の中に球体

まどろみ


深い闇の中
歩くことに疲れて
眠りに落ちていく
重かった心が少しずつ
眠りと共に安らんで行く
ああなんて
今までがうそのように
世界がやわらかいんだろう
まどろみの中を漂う

夢を見る
淡い光の中
葉ずれのもと
世界が暖かく きらきら
うそのように穏やかで
これまでの波乱がうそのように
暖かい時間
夢だろうか
いつまで続くのだろう
どうかこのままと
願ってしまう

ひと時のまどろみの中
夢を見る
ようやくたどり着いた暖かな時間
長い時のほんの挟間と
すぐに過ぎ去りしものと
解り過ぎる位に痛切に解っていても
祈ってしまう
どうかこのまま
ひと時の夢
どうか
いましばらく
このままでいさせてください
願わずにいられない
夢見た時間
おだやかな
まどろみの中見た夢

どうか
この
ひと時のまどろみの夢
この暖かさがたとえ夢のうそでも
いましばらく
この時間をください
お願いこのままいさせてと
祈ってしまう
ささやかな
時の挟間
流れる時間は
止められない
それが次にどこに向かうかも
わかっている
そしてこの時間が
わずかしかないことも
だからこそ
せいいっぱい
大切に大切に暖めて
可能な限り
どうか
引き伸ばそうと
罪を思う

ひと時の夢 ひと時の安らぎ
引き伸ばすことがどんなに
大切な何かを傷つけることを

失うかも知れぬことをわかっていても
それでもこのまどろみにとどまりたいと
切に願う
なんて罪
なんて叶わぬ夢

たとえ
目覚めれば
嵐の中であっても
その中でまどろんだ時間
この暖かさを
どうか
今しばらく
どうか
願い



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