ある少女の人生 03/11/28


終戦直後の混乱の中 貧しい家族に
何人めかの子どもが生れる
女姉妹6人と幼くして死んだ2人の子そしてオヤタチの大家族
両親も大家族で育った
生れた少女は ミルクも無く
薄い砂糖水で育った 
忙しい母親の代わりに少女の姉が面倒を見る
少女に妹達が生れると今度は少女が妹達の面倒を見た

時代の節目節目にあたり
翻弄され
貧しく忙しい 厳しい家庭
お互い面倒を見合った姉妹は仲がよかった
やがて6人は一人を除いて結婚していく
女ばかりの姉妹
後を継ぐのは長女のはずだった
兄弟の多い時代でも 来てくれる相手は見つからず
長女は嫁いでいった 家をでてしまった
この機を逃すと適齢期を逃すと心配した両親の
苦しく切ない判断
手放した
おもいがけず
6人の中で
たまたま二男に嫁いだ少女
父が持病で倒れた事を機に
自分の実家の跡を見る事に成る
後継ぎとなった少女
思いがけない大変な運命の悪戯

そして時はたち 少女は4人の子を産む
1組の双子 うずくまって一人は息をしていなかった
3人になった
2人はオトコノコ 長男が生れた
ああ、この子がずっとワタシタチを助けてくれる
そう、どれだけホッとした事だろう
そのはずだったのに
口数が少なく 家に居ることが減っていく
思いがけず突然家を出て行った
そして
舞い込んだ手紙と写真
養子に行った長男
どれだけの悲しみと裏切られた思いで切望と苦しみと悲しみ
溢れるココロに悩んだろう
そして思いは かわいがっていた次男に向けられた
良くなついていた次男 
“この子は裏切らない”

運命の悪戯 混乱の中で生まれ育ち
親の愛情という物を
その子は感じて育ったのか その親もまた・・・
姉妹に育てられ育てた少女
その子の出て行った長男
彼もまた 新しいうちで大きく戸惑う 家族というものに
何故戸惑ったのか この事実の意味する事は
少女の築いた家庭は 
何かが欠けていたということか
それとも あるいは・・・
そこでなにを
見たのだろう

親の愛情を 
温かいと感じられず 縛られる事を嫌って出て行った
少女が愛情と信じていた物は・・・

裏切られたと思っただろう
そんな彼女の次男への思い
どんなにか大きいだろう

彼女はホントウに愛情という物母というもの
本当の意味で母から受けて育ったのだろうか
そんな彼女
そう、 カノジョの人生
どうして 誰が責められよう
親の愛情
カノジョ自身も知っているのだろうか受けたのだろうか
愛情に対する“無知”かもしれない 何か薄い感情の連鎖
オンナノコハこうあるべきとオトコノコはこう有るべきと
そしてみなの行動を一人で把握する事 
方向性を無意識にか意識してか思いどうりに進む事進める事
そうする事で初めて安心を得る

誰が責められよう
あまり知らずに育ったろうカノジョ
どうして責められよう
自分が愛情と信じる事を精一杯しているカノジョを

そんなカノジョに
ワタシは求め続けてしまった
それは苦しみ
お互いに
永遠に手に入らない物 たった一つのノゾミ
それがほしかっただけなのに
そのために 鍵をかけて閉じ込めた
鍵はさびてもろくなっていく
声がする
それはカノジョに従う事 カノジョのノゾミをかなえるために
止めた思考
目覚めれば 全てが矛盾する
そう 本質は カノジョを苦しめる存在となる生き物
それを知ってかカノジョの掛けた呪文

カノジョの夢は叶いつつあり
ワタシの役目は終わる 唯一つを残して
新しい娘 かわいい後継ぎ
囲まれて笑いあう事
後わずかで叶う

ワタシの最後の仕事
カノジョのために出来る事
もう求めない事
求めた物は
ホントウはカノジョ自身こそが
鍵を掛けた奥底で必要としていた物
それを求めたワタシの罪
荷物となったワタシに出来る最後のことは
そう
この世界から跡形も無く
消え去る事
付いてまわる気配 あなたは死神?
どうぞ一刻も早く
消して下さい
そうすれば
少女――カノジョは漸く心の奥底で求めていた物を
得られるでしょう 解き放たれるでしょう
長いトンネルを抜け
初めて温かい物を本当に得られるのでしょう

<日記>03年11月頃

こわい こわい ヒトが怖い 笑顔の裏は何 その裏で舌を出してるのが怖い・・・。
薬を飲む 太る 下剤 効かない 太る太っていく もう絶えられない皆皆 わからない。
だから いつもの気配影だけのワタシの監視 あなたが どうか死神でありますように。心からそう願う
からっぽ 枯れていく 冷たい さむい はやく“たすけて”くださいこれ以上醜く汚くなる前に これ以上ヨノナカの邪魔になる前に 付いてまわる気配 なにをみてる?


【選んだ理由】(菫)

  琴子さんの生きていく苦しさは、アスペルガー症候群だったことだけが原因ではないようです。 母親が言った言葉、「オネガイダカラ ガマンシテ」。母の言うとおりにしていれば、いつか自分 をちゃんと見て、愛情を注いでくれるかも・・・その思いで従ってきた琴子さん。

  でも得られない愛情。でも、母親の育った環境を思うとき、母を責めることもできないことを 、琴子さん自身が理解しているのです。定型発達の私より、ずっと人の心が分かっているようにも 思われるウタです。そして、その優しさのために、誰を責めることもできず、ストレスを心に押し込む琴子さん。

 「お母さんの言葉を無視して自分のやりたいことを通したら」の私の言葉に「カノジョが悲しむことはできない・・・」。 優しさゆえのつらさ。琴子さんの母を綴ったこのウタはそんなことの理解のために選びました。


   TOP   >  唄(ウタ)と日記   >  ある少女の人生       ← 前へ      次へ→