臨界点――the last straw――    6/6/27


平行に
距離を保つことで
初めて安定する
近いほど見えないように
隣の国より遠い国のほうが近いように
近くで見るとそこしか見えないで
ただの壁のようで終わるものが
遠くへ行くことで
それが何だったのか全体がわかるように

離れることで安定していられる
離れなければ安定出来ない
ひとつと
それでも離れることで
不安定でどうしようもなくなるもうひとりを抱えて

どうしようもないとき
抱えてつぶれないように
この2本の枝でもここにあるから
“手――両腕”伸べられた2本の枝
つかめるものは
“ここにある”からと
延べてくれる
でもそれはその腕は
知っていてか 気づかずしてか
わたしには
とてもたくさんのものが すでに 乗っていて
これ以上は
とても難しく 悲しいものに見えます
“いいよ”と言うその枝を
触れれば折ってしまいそうに 見えます
そうして多くの荷物たちを
抱えていたものすべてを
この上わたしが触れれば
あたりに振りまいてすべて
壊してしまうでしょう
わたしには
そうとしか見えない 思えない
たくさんのものをすでに抱えてしまった
精一杯の
枝に見えます ”手“に

“最後の藁”

らくだの背負った
その上に
最後の一本
そのたった 1本の
最後の藁が
臨界点
らくだの背を砕いた
わずかな


あなたが乗せようとしているもの
“いいよ”と 延べた
そのものは
それはあなたの そうしてもいいと思える
その形を
装飾して
最後の藁を隠しています
それをかけらでもこの中から出たりしたら
その枝に
塵に満たないものでも 掛かりでもすれば
それを手折って
護るすべてを
戻せないほど壊してしまうもの
それを隠し持ったものです

この中にそれを埋め込んで
それを消滅しない限り
あなたを壊す
最後の藁
それでも
これを存続して
隠し持ってすることが
償いだと
大切なあなたの望みをかなえられない
そうなってしまって戻せないこのものを
そうなったことがわかれば
好まずしてそうなったもの
それでも
そうなったほうが責任
そうした人にそうされる隙があった
それを見せた罪
それがこれ
この中に隠し持った
償うべき
罪に紅く汚れた藁

すべてを壊す最後のものになること

それを
存続することが
あなたの止めを存続することが
あなたを苦しめる
これは逃げでしょうか
わたしはそうすることが
苦しい
そして
人は言う
存続することが
償いだと

これは逃げでしょうか
存続する苦痛を
受け続けることが償い
でも
誰かの息の根を止めること
必死に護っているものを壊すもの
臨界点であるもの
そこに最後の一滴をたらす
わずかな錘であっても
そうあり続けて
存続することが
償いでしょうか
その恐怖の対象物を
壊す止めを
消して
そうすることで破壊をせずにすむことは
償いには
そうすることで償えるものでしかないのに
恐怖を与え続けることが
そうなる対象となるものがいることを
それを続けることが
償いでしょうか

そうならないでいようと
そうしてしまうことは
償いではないのでしょうか
そうすることでしか本当は戻せないものでも

逃げなのでしょうか
恐怖を与える止めとして
存在する苦しみから
逃れようと
そうしたいがために
償いを放棄
そうですか
ほんとうに
そうですか

それは性別の違いと見える姿の
基準以上か以下か 平均か
そういうヨノナカの
差をどうしてもつける世の中の
そしてそれで持った意識と
当事者ではないという
責任逃れとは
違うと言い切れますか

行きなさい
生きなさい
逝きなさい
活きなさい

償うために
存続しなさい

最後のとどめ
臨海線を壊す
それをもって

償いですか
“逃げ”とは
何でしょう
存続して償いは
何でしょう
答えは くれず
求めても 探しても
見つからず 見つけることが叶わず
あるのは

存続の償いと
消滅の償い
最後の藁の
扱いは

らくだの背を
砕いたように

多くの荷を持った腕を
砕く

臨界点を越える最後の存在

それを存続する償い
それをなくす償い
2つは相反して
2つをしなければならず
永遠に出来ない両立の矛盾は
渦巻くばかりで
息苦しい

イキグルシイ
いきぐるしい
息苦しい
生苦しい

あなたが乗せようとしているそれを
”イイヨ”そういう そして
伸べられた それ

乗せてはいけない
乗ってはいけない

何故かを知ってはいけない
それは最後の藁
あなたの腕にはすでに抱えきれない荷物

わかっていることは
けしてつかんではいけないこと
どの手もみんな

つかみたい
苦しいほどに
望んで
本当は
それがほしくて

でも
壊すことを知っていて
それが苦しくて
踏み出すことのできない一歩

つかんではいけない
臨界点
矛盾する償いの中
イキグルシイ
望むものは
望んだものは
矛盾の中

ただ苦しくなるだけ

あなたの腕にはもうたくさんの荷があります
すでに
臨界点
藁ひとつで
“わたし”という藁一つで
壊れる

乗せようとしているそれを
そちらに向けてはいけない
それは
最後の藁だから
償うべき償いの出来ない
苦しい最後の
藁だから

臨界点を壊す
バランスを破壊する
最後の
止めとなるものだから


<日記>06年6月頃

ずいぶんと、あれから、いそがしい、のか、手がほしい、そう思うときには、手は、いつも、帰るべきところに行ってしまって、其処には無い
つなぐ”手”、差し伸べる、くれようとする人、いつも
つかみたい、本当は、つかんでしまいたい、居場所と自分、探して
でも
”手”をくれる人は たくさんのものがいつも
ほかの誰かよりもたくさんにすでにあって こわしてしまいそうで
それがこわくて
つかんでしまって壊してしまって そして永遠に失ってしまう
こわくて つかみたくてもつかめなくて
つかみたいのに
つかんだとたんに消えることが どうしてもこわくて
ただ
また 誰かがいつも居るのに”居ない”
つかんだらさいご ずっとつづく
居るのに居ない永遠
それが こわかった
まだ
つかんでもダイジョウブな手がたくさんあれば
”イイヨ”と言ってくれる でも 壊したくなくて 我慢して どうにもならなく
なって そういうときに つかもうとするとその手には
そういう手は少ないから みんな自分でいっぱいで忙しいセカイだから いつも 
もらえそうな”手”にはもうすでにたくさんの抱えるものがありすぎるから
そうでなくなれば
そういうせかい

【コメント】(琴)

  たった一本の藁の重さ一つが命取りになることを、臨界点を言う”最後の藁”…
 いつでもいいよと人は言う、でも、本当にいつでもいいよなどあり得ないことを私は知っている、だってそれは24時間365日付き添っていなければできえないことだから
 わかっている、あり得ない「いつでもいいよ」を、どうしても求めてしまう、そうして、いつでも、私が最後の藁になりうることを知る
 とても苦しくて悲しい時間
 手はいつでも一杯で、足りない、本人が知らないだけで…
(2010年07月14 記)


   TOP   >  唄(ウタ)と日記   > 臨界点――the last straw――   ← 前へ      次へ→