ひとつはひとつ   6/8/5


いつでも頼っていいよ
気軽に言える人
挨拶のように決まり文句に返ってくる言葉
なんて重たいコトバだろう
こんなに重いものはあるだろうか
それを発したら
後戻りできるだろうか

言葉どおりでいいのか
挨拶が混ざっているのか
期間が決まっているのか
それを知らされることはない
それを告げる人もいない
そして
本当に“いつでも”頼っていく人は
“普通は”
“いない”

もしそのまま受け取って
もし期限も範囲も決めないで
それを言って
受け取って
そのまま実行
その結果
何がおきてしまうだろう

ひとはみんな
受け入れられる量が決まっているのに
それを超えたら
壊れてしまう
それなのに
簡単になんて気軽に
「いつでもいいよ・・・」

ほんとうなのか
だってその後ろには
今は少し落ち着いているけど
少しゆれたらあふれそう
そこに何かが飛び込んできたら
壊してしまう

どうして
手を伸べる人は
そして
つかみたい人は
わたしが入ればあふれること
見えないの
気がついて

わたしには
どうしても見える
だから入れない
はいれないから
いつも
ひとつ
わたしはわたしの中に居る
わたしがあふれても
わたしがこわれるだけ
わたしが一つ入って
わたしがひとつ
こわれるだけ

数少ない
これが消えたら
視界から
手はなくなる
それをつかんだら
おしまい

おしまいにしたくない
こわくて
そして
すでに入っているものが寄り添っている

わかっている
ひとつはひとつ
わたしはわたしを壊しても
となりには
何もおきない

わかっている
それでも
どうなるか解かっても

見ない振りして考えないで
それを
しがみついて離れたくないと
泣き喚くわたしが
わたしのなかで
壊して出ようと

それでも

わたしはとじこめる
そして
ほんとうは
とじこめているわたしが
閉じ込めているほうが
手をつかんで壊してしまうくらいにしがみつきたい
それを切望していること
本当にいつでもいいよを求めて
本気にしていつでもすがりつきたくてたまらないこと
ほんとうは
手をつかみたくて仕方がない
でも一度つかんでそれを消してしまうことが
なくすことが怖くて
いつでもいいよが
こわくて
わからなくなる言葉になる

きょうもあしたもあさっても
わたしはわたしを私に入れる
ひとつはひとつ
ひとつからひとつ
ひとつだから
ひとついれて
ひとつ
こわす

なきたいのはだーれだ
わめきたいのはだーれだ
こわしたいのは・・・


<日記>06年08月頃

いつでもいいという手は、いつでも言いということなど、ありえない。
そう、いつでもつかもうとするほうが、間違いで、相手のゆとりも無ければ、手などすぐに消えてしまう。だから、いつも怖くてつかめない。そして、つかんでしまうと、消えてしまう。自分が楽になるために誰かの手を無理やり自分に引っ張るだけの行為だから。
わがまま承知で、ついつかんでは、してはいけない期待をするだけ。
病院では先生は遠くなるばかり つかむことが出来るはずの手はここにはとうに無い
本来の姿であろう。精神科医が患者に感情移入していたら狂ってしまう。だから、話半分で、医者になってからキャリアを積むほど、ただ聞いて、それで、薬を出す。物を扱うようになる。心は、ものになる。ただ話を聞いてほしいだけの症状が多いから、誰も話す人がいないからストレスでおかしくなり、そういうところがほしい人がそこでみんな話してすっきりするのが多くだろう。だから、感情移入して聞いていたら、身が持たないだろう。最初はうまくできなかった、だから、近くに感じた。わたしはそれができる“ベテラン”の反応では、わたしが居ないと感じるだけ。ただテープが報告し、居なくなったわたしは、確認する最良の方法を禁じられ、いないままで、途方に暮れ、終わる。
電話、メール、電話が余計に難しくなるのでメールしか手段が無い、でも、それも、応答が少なく、医者の日は、自分がいるのかどうかがわからなくなる日になっていく。薬をもらって。
ドウシテ、そうあるべき医者と患者の役が、どうにもできない。
今日もまた、反応しないメールに、わたしは居なくなる

【コメント】(琴)

  会話の中で例えば困りごとの話、なんてしていると気軽に出てくる言葉、「いつでもいいよ」
 相手は一体どんな気持ちでそんな重大な言葉を発するのだろう、いつでもなんて、あり得ないのに.本当にその手をつかみたくて仕方がないときに、その「いつでもいいよ」はすぐにあるのだろうか、期待してしまう。期待して、手を伸ばせば、いつも無い手・・・
 挨拶の、「いつでもいいよ」は、どうか、私に向けないでください、私は大切な物を壊してしまう、ただ、ほしいときに実は手は消えていることを知って、絶望に落ちるだけだから…いつも切望している、「いつでもいいよ」の手
 今日もまた、私は私の中に私を閉じ込める
(2010/07/15記)


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